関数w
は1つの引数n
を受け取る関数で、その実行内容は文字'w'
をn
回表示することである。
def w(n):
for i in range(n):
print('w', end='')
w(5)
wwwww
w(3)
www
以下の関数w
は2つの引数n
とc
を受け取り、文字c
をn
回表示する。
def w(n, c):
for i in range(n):
print(c, end='')
w(3, 'フ')
フフフ
関数に値を渡すとき、変数名を明示することもできる(キーワード引数)。
w(n=3, c='フ')
フフフ
キーワード引数を使うと、関数定義時の順番に関係なく引数を渡すことができる。
w(c='フ', n=3)
フフフ
関数定義時の順番による引数(この例ではn
)とキーワード引数(この例ではc
)を混ぜて関数を呼び出すこともできる。
w(3, c='フ')
フフフ
キーワード引数の後に順番による引数を配置することはできない(もともと、関数w
の2番目の引数はc
を取ることになっていたが、キーワード引数n=5
を渡してしまったので、c
を順番による引数として渡すことができなくなった)。
w(n=5, 'フ')
File "/tmp/ipykernel_204916/525943670.py", line 1 w(n=5, 'フ') ^ SyntaxError: positional argument follows keyword argument
同じ引数を2回以上渡すことはできない(以下の例では引数c
が2回渡されている)。
w(c='フ', n=5, c='w')
File "/tmp/ipykernel_204916/2347743153.py", line 1 w(c='フ', n=5, c='w') ^ SyntaxError: keyword argument repeated: c
以下の関数w
は2つの引数n
とc
を受け取り、文字c
をn
回表示する。ただし、引数c
が指定されなかったときは、c
の規定値(デフォルト値)として'w'
を用いる。
def w(n, c='w'):
for i in range(n):
print(c, end='')
w(3, 'フ')
フフフ
w(3)
www
以下の関数w
は2つの引数n
とc
を受け取り、文字c
をn
回表示する。ただし、引数n
が指定されなかったときはデフォルト値として3
を、引数c
が指定されなかったときはデフォルト値として'w'
を用いる。
def w(n=3, c='w'):
for i in range(n):
print(c, end='')
w(5, 'フ')
フフフフフ
n
の引数を省略し、c
の引数だけを指定するために、以下のような関数呼び出しを行うとエラーになる。
w(, 'フ')
File "/tmp/ipykernel_204916/2733099650.py", line 1 w(, 'フ') ^ SyntaxError: invalid syntax
このような時は、キーワード引数で関数を呼び出せばよい。
w(c='フ')
フフフ
以下の関数呼び出しはすべて同じ結果になる。
w(5, c='フ')
フフフフフ
w(n=5, c='フ')
フフフフフ
w(c='フ', n=5)
フフフフフ
関数から値を返すにはreturn文を用いる。
def plus_one(x):
x += 1
return x
関数の戻り値を評価することで、関数の値が表示される。
plus_one(3)
4
先ほど説明した関数w
は、関数の内部でprint関数を呼び出して文字を表示していたが、ここではincrement関数の戻り値が評価されることによって、関数の値が表示されている。以下のように、関数の戻り値を変数r
に代入した段階では値が表示されず、変数r
を評価してから値が表示される。
r = plus_one(0)
r
1
関数の戻り値として文字列を返すこともできる。
def measure_word(n):
if n in (1, 6, 8, 10):
return 'ぽん'
elif n == 3:
return 'ぼん'
else:
return 'ほん'
for i in range(1, 11):
print(i, measure_word(i))
1 ぽん 2 ほん 3 ぼん 4 ほん 5 ほん 6 ぽん 7 ほん 8 ぽん 9 ほん 10 ぽん
関数の戻り値として、複数の値を返すこともできる(厳密には複数の値がタプルと呼ばれる1つのオブジェクトにまとめられてから返され、その戻り値が関数の呼び出し元で分解される)。
def fg(x):
return x ** 2 - 2, 2 * x
fx, gx = fg(0)
fx
-2
gx
0
以下の関数divisorは与えられた整数n
に約数があれば、約数のなかで最小のものを返す。
def divisor(n):
for a in range(2, n//2+1):
if n % a == 0:
return a
divisor(12)
2
n
が素数の場合(約数がない場合)はreturn文が実行されないため、値を返さない。
divisor(11)
より正確には、None
と呼ばれる特殊な定数が返されている。
a = divisor(11)
type(a)
NoneType
値がNone
かどうかは、オブジェクトの同一性を検査する演算子is
を用いる(divisor(n) == None
とは書かない)。これは慣習だと思ったほうがよい(正確な理由はオブジェクトの比較がカスタマイズされたとしてもNone
との比較が正しく行われるようにするためであるが、そのようなお約束だと思っておく方がよい)。
n = 11
if divisor(n) is None:
print(n, 'は素数')
else:
print(n, 'は素数ではない')
11 は素数
関数宣言の直後に文字列を書くと、ドキュメンテーション文字列として扱われる。他のプログラミング言語ではコメントとして記述することが多いが、ドキュメンテーション文字列はインタプリタ上で参照可能であるうえ、Sphinxなどのドキュメンテーション生成ツールなどで用いられる。
def gcd(x, y):
"""
Find the greatest common divisor of the given numbers.
>>> gcd(60, 48)
12
>>> gcd(17, 53)
1
"""
while y != 0:
(x, y) = (y, x % y)
return x
ドキュメンテーション文字列はhelp関数で参照できる。
help(gcd)
Help on function gcd in module __main__: gcd(x, y) Find the greatest common divisor of the given numbers. >>> gcd(60, 48) 12 >>> gcd(17, 53) 1
Jupyterでは関数名に続けて?
を書くことで、ドキュメンテーション文字列を参照できる。
gcd?
Signature: gcd(x, y) Docstring: Find the greatest common divisor of the given numbers. >>> gcd(60, 48) 12 >>> gcd(17, 53) 1 File: /tmp/ipykernel_204916/1813389976.py Type: function
なお、ドキュメンテーション文字列に含まれている実行例を使って、関数のテストを実行できる。gcd関数のドキュメンテーション文字列には以下の実行例が書かれている。実際に関数を実行した結果、期待通りの値が返されるかどうか、テストできる。
>>> gcd(60, 48)
12
>>> gcd(17, 53)
1
import doctest
doctest.run_docstring_examples(gcd, globals(), verbose=True)
Finding tests in NoName Trying: gcd(60, 48) Expecting: 12 ok Trying: gcd(17, 53) Expecting: 1 ok
Jupyterのセルで定義された変数はグローバル変数として維持される。
x = 1
関数の中からグローバル変数の値を取得できる。
def f():
print('関数f: x =', x)
f()
関数f: x = 1
関数の中で変数を定義すると、その変数は関数内のローカル変数として管理される。
def f():
x = 0
print('関数f: x =', x)
f()
print('関数外: x =', x)
関数f: x = 0 関数外: x = 1
グローバル変数の値をどうしても更新したい時は、global文を使う(普通は使わない)。
def f():
global x
x = 0
print('関数f: x =', x)
f()
print('関数外: x =', x)
関数f: x = 0 関数外: x = 0
関数内のローカル変数に別の関数からアクセスすることはできない。以下のコードでは、関数f
の中で関数g
で定義された変数z
にアクセスできないため、エラーとなる。
def f():
print(z)
def g():
z = 1
f()
g()
--------------------------------------------------------------------------- NameError Traceback (most recent call last) /tmp/ipykernel_204916/2461913939.py in <module> 6 f() 7 ----> 8 g() /tmp/ipykernel_204916/2461913939.py in g() 4 def g(): 5 z = 1 ----> 6 f() 7 8 g() /tmp/ipykernel_204916/2461913939.py in f() 1 def f(): ----> 2 print(z) 3 4 def g(): 5 z = 1 NameError: name 'z' is not defined
関数の引数で渡された変数の値を関数内で変更しても、呼び出し元の変数の値に影響を与えない。ただし、後述するコレクション({ref}ch:list
や{ref}ch:dict
など)を引数に渡したときには異なる挙動を示す。以下のコードでは、関数内でx += 1
されるが、呼び出し元の変数の値は変更されない。
x = 1
def f(x):
x += 1
print('関数f: x =', x)
f(x)
print('関数外: x =', x)
関数f: x = 2 関数外: x = 1
f(x)=x2−2=0の解をNewton-Raphson法で求めるとき、f(x)とf′(x)の値を、それぞれ、関数fとgの呼び出しで取得できるようにすると、プログラムの見通しが良くなる。
def f(x):
return x ** 2 - 2
def g(x):
return 2 * x
x = 1
while True:
fx, gx = f(x), g(x)
if -1e-8 < fx < 1e-8:
break
x -= fx / gx
print(x)
1.4142135623746899
これを、h(x)=x2+5x+6=0の解を求めるプログラムに書き換えるには、例えば以下のような修正を行えばよい。
ところが、この方針ではNewton-Raphson法の実装の多くの部分をコピー・ペーストすることになる。
def hf(x):
return x ** 2 + 5 * x + 6
def hg(x):
return 2 * x + 5
x = 1
while True:
fx, gx = hf(x), hg(x)
if -1e-8 < fx < 1e-8:
break
x -= fx / gx
print(x)
-1.9999999999999991
また、Newton-Raphson法を実行するときの初期値を変更するには、冒頭のx = 1
の行だけを変更するだけであるが、やはりNewton-Raphson法の実装の多くをコピー・ペーストする必要がある。
x = -4
while True:
fx, gx = hf(x), hg(x)
if -1e-8 < fx < 1e-8:
break
x -= fx / gx
print(x)
-3.0000000002328306
そこで、Newton-Raphson法のアルゴリズムの実装を再利用できるようにするため、アルゴリズム本体を関数として実装する。以下のnewton_raphson関数は、
func_f
)に解を求めたい二次多項式を表現した関数を指定するfunc_g
)に解を求めたい二次多項式の微分を表現した関数を指定するx
)にNewton-Raphson法の初期値を指定する(省略された場合は0とする)def newton_raphson(func_f, func_g, x=0):
while True:
fx, gx = func_f(x), func_g(x)
if -1e-8 < fx < 1e-8:
return x
x -= fx / gx
既に定義済みの関数hfに対応する方程式の解を求めるには、次のようにすればよい。
newton_raphson(hf, hg)
-1.9999999999946272
初期値をx=−4として、関数hfに対応する方程式の解を求める(もうひとつの解が求まる)。
newton_raphson(hf, hg, -4)
-3.0000000002328306
異なる関数(既に定義済みの関数fとg)に対応する方程式の解を求めるには、newton_raphson関数の引数を変更するだけでよい。
newton_raphson(f, g, 1)
1.4142135623746899
newton_raphson関数のように、引数に関数を渡すことができるのは、変数も関数もオブジェクトへの参照として扱われているためである。
f
<function __main__.f(x)>
type(f)
function
関数f
を別の変数q
に代入すると、q
も同じ関数として呼び出すことができる。
q = f
q(0)
-2
f(0)
-2
無名関数(lambda関数)を使うと、defキーワードで関数を定義せずに、簡単な関数を定義できる。無名関数は、以下のように記述する
lambda 引数のリスト: 返り値
手始めに、3x2+6x−72をlambda関数として定義し、その関数オブジェクトを変数f
に代入する。
f = lambda x: 3 * x ** 2 + 6 * x - 72
変数f
は関数として使うことができる。
f(0)
-72
f
<function __main__.<lambda>(x)>
type(f)
function
fやgといった関数を定義せずに3x2+6x−72=0の解を求めるには、3x2+6x−72と、その微分である6x+6をlambda関数として定義し、newton_raphson関数の引数に渡せばよい。
newton_raphson(lambda x: 3 * x ** 2 + 6 * x - 72, lambda x: 6 * x + 6)
4.000000000053722
(このセクションの内容を理解するには、{ref}ch:tuple
や{ref}ch:dict
の知識が必要である)
以下の関数decimalは任意の長さ(可変長)の引数をとり、対応する10進数を返す。
def decimal(*args):
v = 0
for arg in args:
v *= 10
v += arg
return v
decimal(3, 2, 4)
324
decimal(6, 5, 5, 3, 4)
65534
関数に渡された引数はタプルとして変数args
に格納されている。
def func(*args):
print(type(args), repr(args))
func(3, 2, 4)
<class 'tuple'> (3, 2, 4)
関数decimalに可変長の引数を渡す代わりに、タプルを渡すことを意図したが、arg = ((3, 2, 4),)
となってしまうので、期待通りの動作にはならない。
V = (3, 2, 4)
decimal(V)
--------------------------------------------------------------------------- TypeError Traceback (most recent call last) /tmp/ipykernel_204916/399528650.py in <module> 1 V = (3, 2, 4) ----> 2 decimal(V) /tmp/ipykernel_204916/979405978.py in decimal(*args) 3 for arg in args: 4 v *= 10 ----> 5 v += arg 6 return v TypeError: unsupported operand type(s) for +=: 'int' and 'tuple'
タプルやリストを関数の引数として展開するには、*
を付ける。
decimal(*V)
324
なお、print関数の引数としてV
を渡すとき、*
の有無で実行結果が変化する(以上の理屈から考えてみよう)。
print(V)
(3, 2, 4)
print(*V)
3 2 4
decimal関数が10進数ではない引数を受け付けるようにするため、底(base
)を引数に指定できるように改良した。
def decimal(base, *args):
v = 0
for arg in args:
v *= base
v += arg
return v
以下の関数呼び出しは分かりにくいかもしれないが、最初の引数である2
は変数base
に格納され、以降の引数は可変長引数としてargs
にタプルとして格納されるので、2進数の1010、すなわち10が返される。
decimal(2, 1, 0, 1, 0)
10
関数呼び出しの分かりにくさを軽減するため、base
をキーワード引数として関数を呼び出してみたが、キーワード引数の後に可変長引数を配置することができないため、エラーになる。
decimal(base=2, 1, 0, 1, 0)
File "/tmp/ipykernel_204916/3667318082.py", line 1 decimal(base=2, 1, 0, 1, 0) ^ SyntaxError: positional argument follows keyword argument
base
をキーワード引数として渡したい場合は、可変長引数の後ろに配置すればよい。
def decimal(*args, base):
v = 0
for arg in args:
v *= base
v += arg
return v
decimal(1, 0, 1, 0, base=2)
10
以下のencode関数は引数src
の各文字を、キーワード引数で指定された文字列に置換したものを返す。
def encode(src, **kwargs):
dst = ''
for c in src:
dst += kwargs.get(c, '')
return dst
encode('abc', a='0', b='10', c='110', d='1110', e='1111')
'010110'
関数に渡された引数は辞書として変数kwargs
に格納されている。
def func(src, **kwargs):
print(type(kwargs), repr(kwargs))
func('abc', a='0', b='10', c='110', d='1110', e='1111')
<class 'dict'> {'a': '0', 'b': '10', 'c': '110', 'd': '1110', 'e': '1111'}
関数encodeに可変長キーワード引数を渡す代わりに、辞書を渡すことを意図したが、そのままでは辞書を可変長キーワード引数として扱わないため、エラーになる。
D = {'a': '0', 'b': '10', 'c': '110', 'd': '1110', 'e': '1111'}
encode('abc', D)
--------------------------------------------------------------------------- TypeError Traceback (most recent call last) /tmp/ipykernel_204916/2598886634.py in <module> ----> 1 encode('abc', D) TypeError: encode() takes 1 positional argument but 2 were given
辞書を関数の可変長キーワード引数として渡すには、**
を付ける。
encode('abc', **D)
'010110'
以下は、関数encodeがキーワード引数unk
を取り、さらに可変長キーワード引数を受け取る例である。
def encode(src, unk='?', **kwargs):
dst = ''
for c in src:
dst += kwargs.get(c, unk)
return dst
キーワード引数unk
を省略して呼び出す例である。
encode('abcz', a='0', b='10', c='110', d='1110', e='1111')
'010110?'
順番による引数よりも後であれば、キーワード引数unk
をどこに書いてもよい。
encode('abcz', unk='#', a='0', b='10', c='110', d='1110', e='1111')
'010110#'
encode('abcz', a='0', b='10', c='110', d='1110', e='1111', unk='!')
'010110!'
以下の実行結果からも明らかなように、キーワード引数unk
は辞書kwargs
に含まれない。
def func(src, unk='?', **kwargs):
print(type(kwargs), repr(kwargs))
func('abcz', a='0', b='10', c='110', d='1110', e='1111', unk='!')
<class 'dict'> {'a': '0', 'b': '10', 'c': '110', 'd': '1110', 'e': '1111'}
可変長引数リストと可変長キーワード引数を同時に受け付けることも可能である。
def encode(*args, unk='?', **kwargs):
s = ''
for arg in args:
s += kwargs.get(arg, unk)
return s
encode('a', 'b', 'c', 'z', a='0', b='10', c='110', d='1110', e='1111')
'010110?'
encode('a', 'b', 'c', 'z', a='0', b='10', c='110', d='1110', e='1111', unk='!')
'010110!'
Python早見帳 © Copyright 2020-2024 by 岡崎 直観 (Naoaki Okazaki). この作品はクリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。